チェインギャング

あれは、小学校2年生
ぐらいの時だったと思う。

当時はミニ四駆全盛期で
ダッシュ四駆郎に憧れた。

毎日、毎日、毎日、
ミニ四駆をいじくり回すのが
日課で、どれだけ改造して
車体を軽くするか?

に夢中だった。

ボディに穴を空けて
極限まで軽くする。

そんな事をやっていたけど
友達には勝てない。

なぜかって…
僕の家は、貧乏だったから
パーツが買えない。

だからいつも
貧乏チューニング。

自分で出来る事を
全てやったと思う。

でも、お金を掛けて
チューニングしている
友達のミニ四駆には
勝てなかった。

とても悔しかった。
とても嫉妬した。
羨ましかった。

そして…
友達のミニ四駆が
カッコ良かった。

友達の家に行くと、

「これ、新しく
買ったんだぁ~」

友達は何気なく
自慢をしてくる。

それは僕も欲しい
最新モデルだ。

僕の家は、
そんな最新モデルを
買う事は出来ない。

だけど、
欲しかった。

でも買えない。

そして…

僕は、
友達のミニ四駆を盗んだ。

あとから、
それがバレて、

うちの母ちゃんが
その家に謝りに行った。

僕も同行した。

母ちゃんは、
土下座して謝っていた。

ちょっと
悪い事したなって思ったけど、

それ以上に、自分の家が
貧乏な事を憎んだ。

「母ちゃんが新しいミニ四駆
買ってくれないから悪いんだ。」

と、母ちゃんのせいにした。

そうしないと、
僕の心は壊れる。

友達の新しいミニ四駆を
見る度に辛い。

だから、心の中で
自分は悪く無いって
言い聞かせて、
母ちゃんのせいにした。

あのミニ四駆事件が起こってから
何年立つだろう。。。

もう気が付けば、
33歳のオヤジになってしまった。

そして…

今、僕はミニ四駆では無く、

自分の大好きな
車を手に入れた。

車が好きな人は、

車を「愛車」と呼ぶけど、

僕は「愛人」と呼ぶ。

コイツと共に過ごし、
コイツと一緒に寝る。

全国セミナーは

コイツと全国を
約7000キロを走破した。

これからも
コイツとおじいちゃんに
なるまでずっと共に過ごしたい。

ずっと大切にしたい。

親愛なる車
親愛なる人

コイツのキーを回すと
RB26サウンドが唸る。

その音は、

僕の心をあのミニ四駆に
熱中していたガキの頃に
戻してくれる。

とても
セクシーなヤツだ。

とくに、
後ろ姿が気にいいってる。

あの大きな丸い
テールランプが
日本の魂に見える。

この車を作った人の情熱が
ビンビン伝わってくる。

ものづくり日本。

僕は日本と言う国に生まれて
日本がとても大好きだ。

だから、日本人が開発した
この車を乗り続ける。

「ジャパニーズ、スピリット」

しかし、時代は変わり、

そんなスピリットは

受け入れられなくなった。

多くの人が感じ無くなった。

車=移動手段。

時代は変わり、

今はどれだけ低燃費な
車を開発するか?

と言う物に変化した。

それは、それで良いと思う。

時代の流れには
逆らう事は出来ない。

でも、車を運転する
楽しさは伝えたい。

忘れないで欲しいから。

ガキの頃の無邪気な心。

今度、少し仕事が
落ち着いたら、

母ちゃんをコイツに
乗せてどこかご飯でも
行く事にしよう。

おわり。

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